まるまりもりりん
さっぽろアートビーンズ4人展
さっぽろアートビーンズに所属する4名の作家がそれぞれ、「まる・まり・もり・りん」をイメージして制作した作品を展示する、まるまりもりりん。今回の展示は、日本画の柿崎愛さん、間野桂子さん、陶磁器の棚田裕子さん、アクリル画の楓月まなみさん。
さっぽろアートビーンズは、アートの魅力や体験を通じて地域のアートを盛り上げたいという思いで設立され、頻繁に文化活動事業を開催されています。代表者は今回展示されている間野桂子さんです。メンバーは全員作家さんで、日本画、水彩画、イラスト、切り絵など、様々な技法の方がいらっしゃいます。
間野桂子さんの作品
間野さんの作品は、雲肌麻紙(くもはだまし)に岩絵具で描かれ、一部に金粉や水干絵具を使われています。写真ではわかりませんが、サラサラとした日本画特有の質感に、優しく主張するキラキラとしたパールやゴールドの小さな粒子が表面を覆っています。見る側が動くと、光の当たり具合で作品が煌めきます。
花鳥風月の花が主題ですが、どの作品を見ても、わずかな月明かりの下でひっそりと力強く生きる花、のような印象を受けました。全体に強く主張しない、日本古来の奥ゆかしさも感じられます。支持体が丸キャンバスなことも影響しているのでしょうが、「まる」のイメージがしっかりと活かされています。
楓月まなみさんの作品
楓月さんの作品は、アクリル絵具とエポシキ樹脂を用いた抽象作品。それらを幾重にも重ねることで生まれる、奥行きのある複雑な表現が目を惹きます。一つひとつの層はまったく独立したものではなく、かといってすべてが混ざりあっていることもありません。作品タイトル「鴇色(トキイロ)の記憶」が示すように、現在と過去が絡み合ってはほどけてゆく、記憶のような美しさがあります。
写真の作品とは別に、丸いアクリル板の上にアクリル絵具とエポシキ樹脂を重ねた、透明感ある作品も複数点展示しています。こちらはより層の重なりがはっきりと見えるだけでなく、後ろからも光が通るように制作されています。繊細な表現に、ついつい顔を近づけて見入ってしまいます。
棚田裕美さんの作品
円と楕円のカラフルなシルエット絵画と、塊から削りだして形を作る陶磁器の作品たちは棚田さん。角を探すのが難しいほど、丸っこくて可愛らしい作品ばかり。陶磁器はふんわりと柔らかい色で、猫・シマエナガ・象・カエルなどの生き物モチーフから、果物・雲・運のつく形まで、バリエーション豊かです。今回の展示はすべて日常使いできる小さいものばかり。置物、一輪挿し、線香立て、盛り塩皿、お守り立てなど、セットで使うとより楽しめそうです。
丸くてまとまりのある形ですが、焼く行程では削った部分から割れてしまうこともあるそう。微調整を繰り返しながら出来上がった作品は、少しずつ表情が違います。好みの顔を探すのも愉しいひとときです。
柿崎愛さんの作品
日本画としては意外性のある愛らしいパンダは柿崎さんの作品です。白黒の毛まで細かく描写されています。また、葉と背景の二つの緑が、白と黒をより鮮明に映し出しています。そして、大きなパンダと対比するように展示された小さなハムスターも、可愛らしく描かれています。
動物モチーフは写真の作品を含む3点だけで、あとは桜をモチーフにしたものを多く展示されています。そのどれもが長方形や多角形を組み合わせて作られた支持体の上に描かれたもので、一歩外してしまうと成立しないであろうバランスを上手く取られており、感覚の美を感じます。
まるいものは可愛い、だけでは終わらない「まる」を追求した展示になっています。それぞれの個性が相乗し展開する「四輪の世界」。作品の間近でお楽しみください。
2023年11月8日(水)から11月19日(日)まで